口腔ケアに使用する物品と効果的な使用方法
口腔ケアの重要性が広く知られるようになったことに伴い、さまざまな製品が開発、販売されています。
安全かつ効果的に口腔ケアを実践するために必要な口腔ケア用品と、それぞれの使い方を確認していきます。
口腔ケア物品の選択
口腔ケアに使用する物品は患者の口腔環境やADLに合ったものを選択することが基本です。
患者の状況と口腔環境を観察し、どんなケアが必要かを整理してからケア物品を選択します。
とくに、うがいができるか、残存歯があるか、ひどい乾燥があるかどうかといった点で用意する物品が変わります。
在宅でも継続したケアが必要な場合は、患者や家族が使用しやすいもの、購入しやすいものを選びましょう。
口腔ケア物品の使い方
① 歯ブラシ
歯面のバイオフィルムを除去するためには、ブラッシングが必要です。
歯ブラシは患者自身が使い慣れたものを使うのが基本です。
しかし、歯肉や口腔粘膜が脆弱な場合は、軟毛の歯ブラシを選択するといいです。
ブラッシングをするときは、150~200gの圧でブラッシングすることが望ましいです。
目安として、適度な圧になっている時は、歯ブラシを当てたときに、毛先が歯と歯の間に入ります。
また、「シャカ、シャカ」という磨く音が聞こえます。
バイオフィルムは歯磨き粉を使用しなくても、除去することができます。
うがいをできる患者であれば、歯磨き粉を使用することも可能です。
② スポンジブラシ
スポンジブラシは口腔粘膜の汚れを除去するために使用します。
スポンジの目の粗い方が、汚れの除去効果は高いですが、口腔内が乾燥した状態で使用したり、力を入れてこすったりすると、粘膜が傷つくことがあります。
汚れを湿潤させてから、凹凸面で汚れをかきだすように動かします。
もし、口腔粘膜が脆弱で出血するような場合には、きめの細かいスポンジや綿棒タイプの物を選ぶとよいでしょう。
スポンジブラシには、紙軸とプラスチック軸があります。
紙軸は、低コストですが、プラスチック軸と比べて、柄の弾力性がないため、スポンジに直接力が伝わります。
そのため、適度な力加減でケアする必要があります。
また、スポンジブラシは歯ブラシの代わりにはなりません。
スポンジブラシで歯をこすっても、バイオフィルムは除去できません。
そのため、歯がある人には、必ずブラッシングも行う必要があります。
③ 保湿剤
保湿剤は、口腔粘膜を保湿し、保護するために使用します。
ケアの前に使用すると汚染物を軟化させ、汚染物の除去をしやすくします。
保湿剤には、ジェル、スプレー、液状などの種類があります。
ジェルタイプは、粘度が高いため、保湿効果が長く持続し、粘膜保護効果が高いという利点があります。
デメリットは、粘度が高い保湿剤は、塗布時にダマになったり、保湿剤が痂皮化して回収が困難になることがあります。
乾燥がひどく、保湿剤を繰り返し使用しなければならない場合は、前回に塗布した保湿剤をふき取ってから、新たに塗るようにしましょう。
また、たくさん塗っても保湿効果は上がらないので、1回の使用量を守ることも大切です。
頻繁に保湿剤を使用する場合は、スプレータイプを使用すると膜になりにくく安全です。
④ 口腔ケア用ウエットティッシュ
嚥下障害のある患者で、うがい禁止の場合、歯ブラシでのブラッシングの後、口腔ケア用ウエットティッシュを使用してふき取ります。
人差し指に1~2周巻き付けます。
ふき取る際には、指先や指の腹を使います。
また、歯列には凹凸があり、汚染物がはまり込んでいることがあるため、歯茎部から歯冠部の先に向かって1本ずつふき取るようにします。
口腔内をふき取る注意点は、奥から手前へ一方向にふき取ることです。
また、歯肉頬移行部に汚染物が貯留しやすいため、この部分がふき取れているか確認します。
口蓋や上顎歯列の裏には汚染物が残存していることが多く、ふき取り後の確認が必要です。
⑤ 歯間ブラシ
歯間部に残ったプラークや汚れを除去するために使います。
歯と歯の隙間が広くなった高齢の患者の場合、歯ブラシだけでは清掃が困難なこともあります。
歯と歯の間に抵抗なく挿入できるサイズを選びましょう。
製品の特性を知って、効果的なケアを提供し、患者の口腔環境を守りましょう。