座位の基本ポジショニング

ベッド上の座位には、頭部を挙上した座位と、ベッドから足をおろした端坐位があります。
ベッド上の座位は早期離床をすすめるために重要です。
しかし、不適切な座位姿勢が生じていると、褥瘡が発生したり、呼吸運動に悪影響を及ぼしたりすることがあるので注意が必要です。

ベッド上座位のポジショニング

ポイント

寝位置の確認と修正

背上げをする場合は、まず大転子部とベッドの可動軸位置が合っていることが基本条件です。
この位置が合っていないと、腹部の圧迫や胸郭運動への制限が生じます。

ベッド上で寝位置を修正する場合は、皮膚への摩擦やずれを軽減し、介助者の負担を軽減するためにスライディングシートの活用をお勧めします。

また、側臥位のままで背上げをすると、姿勢の傾きやくずれが生じやすく、苦痛となるので注意します。

背上げによるリスクの回避

背上げを行うと、頭部や胸郭の体圧は低くなりますが、仙骨や踵部などの体圧は上昇します。
この時、圧だけでなく、摩擦やずれも発生するため、褥瘡のリスクが高くなります。
そのため、圧ぬき(頭・背・足・臀部)が必要です。

また、背上げによるベッド柵との挟み込み(首、手、足など)の外傷リスクがあるので注意が必要です。

ベッド上座位による手順

①足側を上限まで上げる
②頭側をあげる
③足側を下げる

②③を繰り返して、変更したい角度に設定します。

ベッドによっては「カインドモーション」という機能を使うとワンボタンで座位姿勢が調整できるようです。

身長の低い患者では、大転子を合わすと膝関節がベッドの可動部と合わないことが起こります。
その場合は、大腿部から下腿の下にクッションを設置するとよいでしょう。

セミファーラー位

背上げで15~30°程度起こすことで、腹部臓器が下がって、その結果、横隔膜の位置も下がり、呼吸がしやすくなります。この時5~15°の足上げをし、姿勢の安定性を高めるために上肢、下肢、足底をクッションでサポートします。

上肢は肩が下がらないようにサポートしますが、肩甲骨までクッションを入れてしまうと肩関節や胸郭の動き、呼吸に影響を及ぼすので注意してください。

足底は土踏まずを中心にサポートします。足先や踵部を圧迫しすぎないようにします。

端坐位のポイント

端坐位とは上肢の支持がなくても座位保持が可能な状態です。

安定した端坐位を調整するには、床に足底がつくようにベッドの高さを設定します。
ベッドが高すぎると足底をつけようとして浅く座るので、座位が不安定となる。また臀部がすべって転落の恐れが生じる。
低すぎると骨盤が後傾して後方に倒れやすくなるので、背中が曲がりやすくなります。

柔らかいマットレスでは、座位が不安定になるので、エアマットなどを使用していれば、通常使用しているマットレスへ戻すなど考慮する必要があります。
起き上がる時に介助量が大きいときはベッドの背上げ機能を活用し、上体を起こしてから座るようにすると容易に起き上がることができます。

端坐位によるリスク

手を伸ばして物をとろうとした際に転落することがあるので、患者の座位保持の安定性や活動性を把握し、必要なものが手に取れるようにベッド周囲の環境整備を行い、リスクを回避するようにしましょう。


まとめ

ベッド上座位は、寝位置、ベッド機能・操作、マットレスの素材、ポジショニング方法、重力、外力の影響を受けます。
自分の力で座位姿勢を保つことが難しい場合は適切な姿勢をとるために座位環境を調整しましょう。