回復期リハビリテーション病棟の退院支援

回復期リハビリテーション病棟では集中的なリハビリを行い、急性期以降も残存する障害の改善と生活の再建を図り、安定して地域生活に戻ることを目的としています。


発症から2カ月以内の患者さんが対象となります。


そのため、発症からまったく異なる身体機能で、急性期病院から転院してきます。
患者、家族は退院後の生活に大きな不安をもったまま転院するケースが少なくありません。


看護師は入院前から在宅に向けた関わりが必要となります。


ここでは「入院前」「入院時」「入院初期」「入院中記」「入院後期」の期間に区分しまとめています。

「入院前」

早期自宅退院を目指して、急性期病院から回復期リハビリテーション病院へのシームレスな転院が重要です。
そして、退院支援は入院前から患者・家族の生活におけるニーズを把握・共有することが大切です。
また、患者を生活者としてとらえ、看護してくことが重要です。そのために「入院前の生活を知る」ことが必要です。

目標

不安なく入院できる

看護

入院前患者訪問
転院依頼のあった患者さんの訪問を行い、入院前から在宅復帰に向けた関わりを行い、安心してリハビリ病院に入院できるようにします。


全身状態・ADL状況・医療的ケアの確認・今後の方向性や希望を確認し、回復期リハビリテーション病棟についての説明を行います。


他職種と得た情報の共有を行います。

「入院時」

高齢者や高次脳機能障害では、環境の変化などで症状が強く出現することがあるので、環境調整も大切です。

目標

入院生活およびリハビリテーションについて理解する。

看護

栄養・転倒・褥瘡リスクの評価を行い、計画を立案します。
内服薬は看護師が管理します。

合同評価を行います。

チーム(Dr・Ns・PT・OT・ST・SW・薬剤師・管理栄養士)でADL状況を評価します。
安全な移動・移乗方法や食事形態・食事方法の選択を行い、入院時から積極的にADLの拡大を目指します。


医療福祉

SWが面談を行い、不安や希望の確認をします。
介護保険などの福祉関係について説明をします。
介護保険が未申請の場合は、早期に申請に行ってもらうように説明します。
身体障害者手帳の取得についても、主治医・SWと相談します。



「入院初期」

目標

入院生活に慣れ、安全にリハビリテーションが受けられる。

看護

入院3日目カンファレンスを行います。

チームで情報共有し、ゴール設定をし、ゴールに向けた支援計画を立案します。

入院3~4週間ごろに第1回目合同カンファレンスを行います。

患者・家族・Dr・Ns・PT・OT・ST・SW・ケアマネージャーが集まります。
患者・家族の思いを聞き、意思決定支援を行い、方向性の確認を行います。
入院時からの病状説明や訓練状況、病棟でしているADLについて情報共有を行います。


入院後1カ月を過ぎた頃に、リハビリスタッフが自宅を訪問し、家屋調査を行います。
住宅環境や状態に合わせた移動・移乗方法の訓練を行います。



「入院中期」

目標

日常生活動作の拡大を図ることができる。

看護

ADLの拡大に向けた援助を行います。
訓練の内容はできる限り生活上の目的や手段に落とし込む必要があります。
服薬管理は、退院後に自己で行う予定であれば、自己管理へ移行していくようにします。

家族に介護指導を行います。
食事・排泄・移動などの生活動作も、退院後に実施しやすい方法を患者・家族を一緒に考えていくことが大切です。
安全に生活ができるためにも家族に、患者のできるADLについて理解してもらう必要があります。

PT

装具の作成をします。
住宅改修のアドバイスをします。

OT

機能回復・維持訓練や住宅改修アドバイスをします。
家事・運転・復職に向けた訓練を行います。

ST

家族にコミュニケーションの取り方や、食事摂取についての指導をします。

SW

ケアマネージャーと連絡を取り、今後の対応について検討します。

第2回目のカンファレンス

訓練の状況、病棟での生活状況、今後の方向性の確認を行います。


「入院後期」

患者・家族が決定した在宅の生活を可能にするために、人的・物的・経済的な環境を整えることが重要です。
外出や外泊は、退院後の生活を直視し、退院後の生活をイメージしやすくするために行います。自宅に帰りたいけれど本当に帰れるのか自信のない患者や家族の後押しとなります。
復職や復学を希望する場合は、職場や学校の環境調査や調整が必要となります。

目標

在宅生活をイメージし、退院に向けて環境を整えることができる。

看護

外出・外泊を進めます。
自宅での実際の動きや患者・家族の反応を確認します。自宅での移動、移乗、トイレ動作、入浴動作、家事動作(料理、洗濯、掃除、買い物).など自宅でどのように過ごしたか確認します。
退院に向けて相談・助言をします。
患者・家族のニーズに到達できない場合、チームで代替案を検討し、落としどころを探します。

PT

在宅生活でできるリハビリの指導を行います。
福祉用具の助言・選定を行います。

SW

住宅改修・福祉サービスの調整を行います。

第3回目カンファレンス

患者のADL状況や希望に寄り添いながら、在宅復帰に向けた支援を行っていきます。
地域で安全・安楽な生活が継続できるように地域とも連携を図っていきます。


まとめ

退院支援では、患者・家族のニーズを把握し、意思決定支援を行うことが大切です。各入院時期においても患者・家族の気持ちは揺れ動くので、看護師はその揺れに寄り添うことが必要です。
患者・家族の情報は常にチームで共有しあう必要があるため、電子カルテなど全員が閲覧できるツールに記録しましょう。