口腔ケアに必要なアセスメント

アセスメントの目的


口腔ケアを効果的かつ効率的に行うためには、まずアセスメントが必要になります。

口腔環境がどのようになっているのかを把握したうえで、その状況にあわせてケアの頻度や手技を決めて実施するというのが手順となります。

口腔ケアの成果を効率化させるキーワードは「均てん化」と「個別化」です。

口腔ケアにおける「均てん化」とは、日常的な口腔ケアの回数や手技を統一し、手技の標準化を図り、勉強会などでその技術を向上させることです。

一方、「個別化」とは、口腔アセスメントにより、口腔ケアが困難な症例を抽出し、歯科衛生士に依頼することです。

歯科衛生士による専門的な口腔ケアで、効果的に口腔衛生状態を改善することができます。

この「均てん化」と「個別化」のためには、まずアセスメントありきです。

アセスメントで口腔内を定量的に評価し、その点数によってケアプロトコールを作成することで、口腔ケアの手技や介入回数の標準化が図れます。

また、歯科に依頼する点数を決めておけば、ある点数以上の場合にはすみやかに歯科に依頼できるようになります。これが上手な多職種連携につながります。

OHAT-J(Oral Health Assessment Tool 日本語版)

OHAT-Jとは

アセスメントシートを導入するにあたって重要なのは、看護師や介護士でも短時間で簡単に評価できることです。

ここでは、OHAT-Jを紹介します。

以下にリンクを貼り付けています。
http://dentistryfujita-hu.jp/content/files/OHAT%20160120.pdf

OHATによる評価法

OHATでは、口腔内の評価8項目(口唇、舌、歯肉・粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛)を健全(0点)~病的(2点)までの3段階で評価します。

① 口唇

 
口唇は内側まで観察します。
口角は軽く閉口させて観察します。

口角の乾燥やひび割れを認めれば1点。

潰瘍や出血があれば2点とします。

② 舌

舌は舌背だけでなく、舌側縁の観察も行います。

舌苔が付着していれば、量、性状、色などにかかわらず1点とします。

潰瘍や出血があれば2点です。
カンジダ性の白斑や舌全体の腫脹も2点です。

③ 歯肉・粘膜

歯肉と頬粘膜は同じ評価項目になっています。

歯肉の腫脹、発赤がある場合、6歯分以下(局所的)ならば1点。
7歯分以上(広範囲)ならば2点。

また、歯周炎による動揺歯がある場合にも2点となります。

粘膜に義歯性潰瘍を含めた潰瘍性病変があれば、1点となります。

頬粘膜のカンジダや扁平苔癬は白色斑として2点となります。

④ 唾液

口腔内が湿潤していれば0点です。

唾液が少量でべたつく、もしくは、泡沫状の唾液をみとめた場合も1点です。

唾液がほぼなく、干からびた状態であれば2点になります。

また、口渇感がある場合にも2点とします。

⑤ 残存歯

残存歯は、う蝕と残根(歯の根っこだけ)の状態について評価します。

う蝕や残根がなければ0点です。

残存歯がなく、上下総義歯を使用している場合も0点とします。

3本以下のう蝕や残根があれば1点。

4本以上あれば、2点とします。

⑥ 義歯

義歯を日常生活で普通に使用していれば0点です。

義歯や人工歯の破折、破損が1部位にある場合は1点とし、2部位以上あれば2点とします。

義歯不適合によって全く使用していない場合や義歯安定剤を使用している場合には2点とします。

義歯の紛失や、入院中に義歯が自宅にある場合も義歯紛失と同じ扱いで2点とします。

⑦ 口腔清掃


口腔内を6ブロック(上前歯、下前歯、右上臼歯、右下臼歯、左上臼歯、左下臼歯)に分けます。

プラーク、歯石、食渣が1~2ブロックに付着していたら1点。

3ブロック以上に付着していたら、2点とします。

口臭が若干あれば1点。著しい口臭があれば2点とします。

⑧ 歯痛

 
認知症などによって自分で口腔内の疼痛を訴えられない人のために、口腔内の疼痛をface scale(0~5)で評価します。

口腔内の問題が原因で、顔を引きつらせる、口唇をかむ、食事をしない、攻撃的になるなどの徴候を認めれば2~3点です。

頬や歯肉の腫脹、歯の破折、潰瘍、歯肉下潰瘍など疼痛を示す身体的な徴候がある場合には4~5点とします。

言動的な徴候がある場合にも4~5点とします。

活用方法


口腔アセスメントでスコア化することで、口腔ケアプロトコールを作成し、ケアを行う時間と回数、方法を決定することができます。

プロトコールを用いることで、口腔内評価と口腔ケア方法の均てん化が図れるとともに、個別に適切な症例を歯科に依頼することが可能になるでしょう。