ICFとは? 基礎知識 

ICFとは「国際生活機能分類」のことです。

リハビリテーションにおける評価は、患者さんの病気だけでなく、その病気からもたらされる障害についても評価し、その障害に対する治療方針などを判断する点に特徴があります。
単に患者さんの症状だけみればよいのではなく、その患者さんの生活背景などを含んだ多角的な視点が必要になります。
しかし、リハチームで一人の患者さんの障害や健康状態を評価し、把握するのは言うほど簡単ではありません。
そこで考え出されたツールとして、ICF国際生活機能分類)があります。


 

ICFとは

ICFは世界保健機構(WHO)から発表されたもので、人の生活機能と障害に関する状況を体系的に表現するものです。

ICFの根底となる考え方に「生活機能モデル」があります。
生活機能とは「心身機能・構造、活動、参加のすべてを含む包括用語」と言い表すことができます。
したがって、「生活機能モデル」とは「疾病や障害の有無に関わらず、すべての人が生活の中で関わる健康上のあらゆる問題について、共通した見方やとらえ方をすること」と言えます。

生活機能の3つのレベル

心身機能・構造 (生命レベル)
   生命の維持に直接つながるものです。


活動 (生活レベル)
   一連の動作からなる目的を持った個人が、遂行する生活行動です。
   日常生活生活動作以外にも職業的動作、余暇活動も含まれます。
  

参加 (人生レベル)
   家庭内および社会的な役割をもって、それを果たすことです。

背景因子と相互作用


活動、参加はその背景となる因子との相互作用によって大きく変化します。
背景因子とは「環境因子」と「個人因子」です。
生活機能の3つのレベルと背景因子は、双方向の矢印でつながっています。
個人の生活機能は、健康状態と環境因子、個人因子の相互作用が複合的な関係によって成り立っています。

「環境因子」… 物的環境 ……  生産品と用具
               自然環境がもたらした環境変化
       人的環境 ……   支援と関係
               態度
       社会的な環境…… サービス・制度・政策

「個人因子」…年齢、性別、生活歴、職業歴、学歴、価値観、ライフスタイル、性格、趣向


「環境因子」は生活機能に対し、プラスに影響する場合は促進因子
              マイナスに影響する場合は阻害因子となる。

ICFを理解するための注意点

活機能全体やそれぞれを構成する個別のレベルにおいても、すべてをプラスの面からとらえます。

生活機能の3つのレベル(心身機能・構造、活動、参加)と背景因子の2つの因子(環境因子、個人因子)は互いに影響しあう関係がありますが、同時にそれぞれの独自性を維持しています。

それぞれの因子を常に偏ることなく全体としてみる必要があります。

実際にサービスが提供される場合、それぞれの専門スタッフが、自身の専門領域を中心に特化しがちですので、注意が必要です。

まとめ

ICFの視点を活用し、退院後の患者さんの生活を正しくイメージすることが重要です。
退院後の生活をイメージできなければ、退院調整は困難です。
ただし、今のところ、ICFだけで患者さんの障害の程度をすべて評価できるまでに至っていません。
回復期リハビリテーション病棟で行う評価として大切なのは、評価の意味を共通言語としてチームスタッフ全員が理解すること評価結果はICFで表される患者さんの全体像の一部であることその全体像をとらえたうえで、評価結果を解釈し治療方針に役立てること、と言えます。